出発前夜

久しぶりの外出だからと、昨晩は服装選びに悩んだ。
夜中にクローゼットから洋服を引っ張りだしては、
「あれがいい、これがいい…」と一人はしゃいでいた。

姿見用の鏡から離れてふと玄関の方を見る。
そこには私が演奏家になりたての頃購入した、ピンクの靴が並んでいた。

思い入れの深いピンク色の靴。
購入してからもう三年以上が経つ。

そうだ、明日はこの色に合う服を着ていこう。
そう考えながら、柔らかい布団にもぐる。
目を閉じてからも、その靴の姿が頭から離れなかった。

明日は朝早く起きよう。
どうせなら丸一日楽しまなくちゃ。